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2024.05.16
メディア/プレスリリース

動物虐待情報提供、「近所で飼われている犬が…」ネグレクトや虐待通報など、323件 ~「動物虐待を告発」するためには~

2024/5/7 プレスリリース記事

先日警察庁が公表した犯罪統計によると、2023年中に動物虐待事犯で検挙された事案は181件に上り、統計を取り始めた2010年以降で最多となりました。当法人がweb上で提供を呼び掛けている「動物虐待情報」の傾向を見ると、SNSを利用した虐待動画の収益目的での配信や、近所で飼われている動物の不適正飼養(ネグレクト)、トラバサミの違法設置による動物の受傷など、多岐に渡る通報内容が見られるようになっています。動物虐待を見過ごさない社会にするために、皆が一丸となって、できることを考えていきましょう。

開設より16カ月間で寄せられた情報提供、その数323件

どうぶつ弁護団では、動物虐待に関する情報提供があった際に、弁護士と獣医師から成るメンバーで事案精査をしたうえで、通報者から費用はいただかず、当法人が主体となって捜査機関に対し刑事告発し、あるいは、行政機関に対し指導を求めています。これまでに寄せられた情報の内容を整理・分類しました。

最も多かった情報提供は、社会的反響の大きかった昨年のあの事件

■行事、イベントでの動物利用 として、「上げ馬神事」や「糸満ハーレーのアヒル取り競争」についての情報提供が多数
長年「地元の伝統」として続いてきた動物を使った行事について、とりわけ上げ馬神事については坂で転倒・受傷した馬1頭が殺処分されたことを受けて、社会的に大きな反響がありました。多くの人が時代に沿った形式への改善を求めて行動し、当法人にも85件もの多数の情報が寄せられました。当法人において慎重に検討し、可能な対応を行い、また、理事長の個人的意見を公表しました(sippo:細川敦史連載)。
引き続き、今後の行事を注視しています。

また、次に多かったのが「SNS情報提供」であり、以下のような内訳となりました。

※「SNS情報提供」計74件中の内訳

「掲載元SNS」としては、利用率の高さそのままの結果ではありましたが、YouTubeでは動画配信で収益をあげる目的、すなわち「炎上目的」での掲載と考えられる内容のものが多くみられました。具体的には、

 〇 ハムスターをトイレに流す動画
 〇 捕獲した猫を捌いて食べる動画
 〇 小動物を多数で殴打する動画

など、見るに堪えない内容のものが多く、言葉をもって被害を訴えることのできない動物たちが犠牲になっている状況が放置されています。
この点について、SNS運営元が、ガイドラインに違反しているとして動画を削除、あるいはアカウントを凍結すべきところ、その責務が正しく遂行されていないことも大きな問題点です。

動画配信者にとっては動画が拡散されればされるほど収益に繋がることを、ユーザー側が理解した上でとるべき行動を慎重に選択し(意図しない拡散に便乗しないなど)、選択肢の一つとして当法人への情報提供も行っていただきたいと思います。

■収益を上げる目的での動画配信の「被害動物」で目立つのは

YouTube動画の主な被害動物は、「猫」「ハムスター」「鳥」といった、小さく弱い動物です。一方、twitter等で拡散される中で、当法人に情報提供されるケースの中には「過度なしつけ」や、「共感力の欠如による虐待まがいの飼育」とも取れる内容が多くみられました。

3番目に多かったのが、「近隣の飼育動物に対する虐待」の情報提供

このカテゴリの詳細としては、「散歩に行ってもらっていないようだ」「炎天下で繋がれている」「庭のゲージに閉じ込めっぱなしである」等のいわゆる「不適正飼養」の通報が7割でした。
残りの3割は、積極的虐待とされる「暴力を振るわれている」「水をかけられ続けている」「悲鳴が聞こえる」などの内容でした。

これらのうち、情報提供フォームの質問事項「7 上記動物虐待を裏付けるような資料はありますか。」の項目で、2/3が「ある」とし、「動画」や「写真」があると答えました。では、この「資料がある」とされた情報提供から、実際どこまで法的アクションに繋げていけるものなのでしょうか。

どうぶつ弁護団として、いただいた情報提供を元にどのように進めていくのか、ここでまとめてみたいと思います。

情報提供から、告発に至るまで

当法人は、web情報提供窓口に寄せられる情報には1件1件全て目を通します。
この時点で、刑事告発をはじめ法的アクションをとることは困難と判断する事案も多いのが事実ですが、それらについても、その後事態が進んで追加の情報提供があれば、あらためて検討を行うこととしています。

資料がある程度集まっていて、情報提供者の方とスムーズな連絡が取れる場合、まずは当法人から聞き取りをさせていただきます。その後、法的手続が可能と判断した事案について、刑事告発や各種申し立ての準備を進めていきます。

あくまで、どうぶつ弁護団が告発人になるという形なので、弁護士や獣医師などの専門家が動いているものの、情報提供者に一切の費用負担はありません(但し、情報提供者=相談者ではありません)。何よりも、精度の高い情報と資料をご提供いただくことが重要です。

また、刑事告発までは難しい場合でも、自治体への申し出など適切な手続が可能と考えられるケースは、その手続を進めます。被害動物がこれ以上酷い目に遭わないために、可能な手続を実行しています。

(ポイントまとめ)
■事件発生からそれほど時間が経っていないか
■なくなってしまった資料が多くないか
■事故ではなく事件である証拠があるか
この辺りについて以前、当法人理事の岸本弁護士が語ってくれていますのでご参照ください。
団体メンバーインタビュー企画。#02 弁護士 岸本悟先生に聞いてみた。
これらを意識した資料収集を行っていただくことで、当法人がより多くの事案にアクションを起こせると考えています。

また、賛助会員向けのケーススタディ配信(オンラインセミナー)でも詳細をお話したいと考えています。
一緒に動物虐待を防ぐアクションを起こしていきませんか? 詳細はこちら

最後に

冒頭で記載した2023年の動物虐待事犯について、警察庁は、「行政的な権限や専門的な能力を有する関係機関・団体等との連携を強化し、不適正な飼養を行う者に対する継続的な指導等を働き掛けるとともに、関係機関の指導等に従わないなど改善が見られない場合は、警察において必要な捜査を行い、被疑者を検挙することにより続発防止を図る」としています。

どうぶつ弁護団も、専門的な能力を有する団体の一つとして、今後、警察との連携を意識してまいりたいと考えています。

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